ドンっ___
6時に家に帰って、それからまた出掛けてたとき。
肩に誰かがぶつかった。
「ってぇな!!どこに目ぇつけてあるいてやがる……んだ…」
けど、その相手は-…。
「おう、稜じゃねぇか。誰に向かってそんな口利いてんだ?あぁ?」
昔、真木家がイヤになったから、家を出たときにお世話になった岸田組の組長だった。
「い、いえっ。なんでもありません、組長」
ハっとして無理やり引きつった笑いを浮かべると、組長は「今はもぉ組長じゃねぇだろ。真木家の跡取りになったんだからよ」と、笑った。
今でもつい、"組長"と呼んでしまう。
岸田組の組長だけあって、苗字は岸田。
下の名前はほんの半年いただけのうちは知らない。
子分思いだけど、曲がったことが嫌いで、自分の組には合わないと思ったら容赦なく首を切る、このうちでさえ、未だに怖いと思う不良で。
「お前、今何してんだ?」
「何って___」
「跡取りの修行とかしてんのか?」
茶化した言い方だけど、言い方には少し絶望の色があった。
「修行だなんてそんな-…。自分にもやる気なんてないんですから」
まぁ、事実だしね。