せっかく素直に謝ってやろうかと思ったのに。
「帰るわ」
ポケットに手を突っ込んだまま帰ろうとすれば、後ろから腕を掴まれる。
「ちょ…」
そのままグイッと引っ張られて、正面からギュッと抱きしめられる。
「ごめんって。謝るから、帰るとか言わないで」
いつにも増して真剣な声で言われてしまえば、もう怒りなんかどこへやら。
「……好きだよ、稜ちゃん」
「……うるせー」
素直な態度はやっぱり取れないけど、たぶん今、うちの顔真っ赤。
そういうとこも、栗崎はちゃんと分かってるから。
まるで周りから見えなくするように、さらにギュッと腕に力を入れる。
「稜ちゃんったら顔真っ赤」
そう言って意地悪く囁く栗崎も。
「そうだ。放課後デートしようか」
そうやって優しく誘う栗崎も。
全部全部、
好き。
Fin.