「稜ちゃん!!」


昼休みになると、栗崎があわあわした様子で駆け寄ってきた。


「んだよ」


ちょっと引き気味で抱きついてこようとしたのを交わせば、がーんとショックを受けていた。


「稜。水崎先輩と話したの?」


「おう。あいつ、意外といいやつだな」


聖華も心なしか心配そうな顔をしてるけど、うちがそう言って笑い飛ばせばポカンとした。


「……栗崎」


壁にトンと背を付けて、中ランのポケットに手を突っ込む。


静かに奴の名前を呼べば、まるで犬のように目の前に飛んできた。


「なんか…ごめん」


「え?」


思ってもいなかったとでも言いたげな視線が目の前から飛んできた。


「屋上の鍵のこと。っていうか、その辺のいろいろ。


全部うちが意地張ってただけだったんだなって、水崎サンと話してて分かったの。


だから、ごめん」


人に素直に謝るなんて、前のうちじゃあり得なかった気がする。


「……」


言い終えて目の前の栗崎を見つめれば、目を見開いて絶句していた。