なんとなく混乱気味になってベンチに腰掛ける。


「…友也が屋上へ行ったのも、私ちゃんと見てたわ。


鍵かかってるって小さく呟いて、また走って戻って行ったから、私も屋上の鍵を開けて戻ったの」


「なんだってんなことすんだよ」


不思議と怒りより疑問の方が大きくて、平坦な口調で問いかけた。


「なんで……。


羨ましかったのかなぁ。こんなに友也に愛されてるあなたが」


ちょっと目を細めて、また寂しくも切なくも見える顔をする。


あぁ、そうか。


この人は…水崎サンは、栗崎のことが好きなんだ。


「だからね。正直、友也とあなたが電話で大喧嘩してるの聞いたとき、ざまあみろって思ったわ。


でもね…電話切った後の友也の顔が、ほんとに苦しそうな辛そうな顔だったから……私何してんだろって思ったの」


あのときは、うちもカッとしてたし、栗崎も変だったから、珍しく喧嘩になった。


電話切った後、うちだって落ち込んだけど、たぶんそれ以上に栗崎はへこんだんだろう。


「だからせめて次の日くらいは、付け込んでやろうかと思って、あなたたちの邪魔してみたってわけよ」


自嘲気味に笑った水崎は、髪を掻き上げてため息を吐いた。