うちが呼びかければ、ん?と言って振り向く。


ん?じゃねぇんだよ…。


「そいつ、返してくれる。ちょっと用事あんだわ」


「私たち生徒会の話するんだけど。それより大事な用事ってなに?」


「お前には関係のないことだよ。プライベートってやつ」


「だったら私たちの話が終わってからでもいいでしょ。こっちは仕事よ」


うちと水崎の間に見えない火花が飛ぶ。


栗崎は困ったような顔で立っている。


…うちだってちゃんと分かってる。


もし相手が水崎じゃなきゃ、この場でさっさと送り出してる。


「……稜ちゃん。5分で戻るから、先に教室行ってて」


しばらくの沈黙の後、栗崎がうちの目を見て言う。


返事も聞かずに、だけど水崎の手を振り払って歩いて行った。


「…なにあれ。感じ悪」


「水崎はそういう奴だよ。あんまり気にしなくていいよ、稜ちゃん」


聖華がむすっとして言えば、綾村が優しく微笑む。


未だもやもやした気持ちを抱えたまま、自分たちの教室へ入る。


最近朝はチャイムが鳴るまでうちらの教室に綾村と栗崎がいることが多い。


昼休みもわざわざ弁当を持って迎えに来てくれて、4人で屋上でお昼を食べている。