吉岡美麗との話に決着がついてて、そろそろそれを実行しようってときなら、前もって何か言っておいてくれればいい。
やつがそれをしなかったのはたぶん……。
″あぁ、そうかよ。もういいよ。お前は許嫁とでも仲良くしてろっ!!″
一方的に勘違いして、勝手にキレてたうちを、それ以上刺激したくなかったからだろう。
「はぁー…」
ほんっとなにやってんだかなぁ…。
家族も、組の奴らまで巻き込んで。
たぶん……信二とか組長たちに被害が及んだのもうちのせいだし。
もう一度盛大にため息をついたとき、玄関で物音がした。
「稜ー、いるんでしょ。降りといで」
声の主は母さんで、いつもより多めな足音が聞こえる気がするんだけど。
とりあえず話もあるので、ドタドタと階段を降りる。
ガラッと襖を開ければ、ここにいるはずのない面子が顔をそろえていた。
「え、なんで…」
ポカンと口を開けて佇んだうちの視界に入ってきたのは、組長と信二、それに哲さんだった。
「よ、稜。久しぶりだな」
「ほんと、久しぶり」
「なんかキレイになったか?」
それぞれが言葉を発して、クククッと笑った。