視線を泳がせながらどう答えようか迷っている様子の栗崎はなんだかおかしい。


「じゃ、帰るわ。またな」


ちょっと意地悪してみようと、さっさと帰ろうとしてみる。


「ちょ、ちょ…」


らしくなく慌てた栗崎にエンジンをかけようとする腕を掴まれた。


「なんだよ」


怪訝な顔で聞き返せば、ハーッと諦めたようにため息をついた。


「……こっちむいて」


呟くような声が聞こえて、首を傾げながらおとなしくそれに従って、少し体をずらして栗崎と向き合う形になる。


いつも見上げてるのに、今はうちがバイクに乗ってるせいで目線が同じ高さだから、変な感じ。


首を傾げたままで待っていると、ニヤッと笑った栗崎がまた近づいてくる。


「今度いつ会えるか分かんないから…」


なんて言いつつ、ギュッとうちを抱きしめた。


「充電」


「……ベタだな」


笑ってこっちも栗崎の背中に腕を回す。


「俺…稜ちゃんに出会えてよかったよ」


急にしみじみと言いだしたので思わず笑えば、パッと離れて今度は目の前が暗くなった。


チュッとリップ音を響かせて、ゆっくり遠くなっていく顔を見つめれば、いつもの妖しい笑みがあった。


「じゃあね、愛しの稜ちゃん」


おどけて見せた栗崎に肩パンして、バイクのエンジンをかけるとさっさと走り出した。