しばらくケータイを握りしめてポカンとしてしまった。


勢いで会うなんて約束しちゃったけど、大丈夫なんだろうか。


変に意識したりしないで会話できるんだろうか。


そんな不安を抱きつつ、実は会えるっていう事実が嬉しくて仕方なかったりする。


ほんと、うちはおかしくなったな。


嬉しいなんて感情、たぶん栗崎に出会う前までは無いに等しいものだった気がする。


恥ずかしいとか、胸が苦しくなる、とか。


そんな思いも栗崎に教えられたのかな。


なんて考えて、ちょっと可笑しくなってクスッと笑った。


ケータイをパタンを閉じて、中ランのポケットにしまう。


「稜ー!!ご飯食べるよー!!」


下から母さんの声が響いてきて、ご飯ができたことを知らせる。


「あーい!!」


でっかい声で返して、ダダッと階段を駆け降りた。


居間の襖をすごい勢いで開ければ、もうみんなテーブルに着いていた。


「落ち着いて入ってきなさい、稜」


苦笑いしたおばあに注意されてちょっと肩をすくめる。


「なんだよ、なんかいい事でもあったのか?」


茶化すように言う香矢に、少しドキッとしたけど、別にと笑って誤魔化した。


その日の夕食は、なんだかみんな無理して明るくしているような雰囲気の中で取ったのだった。