全員がポカンとしたまま、時間が流れた。
「……さぁ、晩御飯の仕度しましょう、歌南虎さん」
その沈黙を破ったのはおばあだった。
「あ、うん。そうですね」
母さんも我に返った様子で返事をして、2人でキッチンへ向かって行った。
それをきっかけに、全員が元に戻って、それぞれが思うように動き出した。
うちもよいしょと立ち上がって部屋へ行った。
「ふー……」
ベッドにごろんと横になって、息を吐く。
「栗崎……」
ポツンと呟いてみたところで、今の状況が何か変るわけじゃない。
栗崎の部屋を出る瞬間に、キュッと胸を締め付けるような切なげな目と出会ったことを思い出した。
また戻れるのだろうか。
またあいつとバカ言い合えるんだろうか。
いつもよりセンチメンタルになっていると、ケータイが音を立てた。
ベッドに横になったまま手を伸ばせば、そばの机の上のケータイに手が触れた。
まだバイブが鳴っていることを考えると、たぶん電話だろう。
ケータイを開いて文字を見れば、驚くべき相手からだった。