一体どうすれば、この状況を打破できる?
頭を抱えて考えていると、ふと前に人の気配を感じた。
バチンッ!!
顔をあげたと同時に、乾いた音が響いて、視界はグラリと揺らいだ。
徐々にジンジンと頬が痛みだす。
「ってー……」
キッと睨んだ先には、怖い顔をした母さんが立っていた。
「どうでもいいって!?ふざけんじゃねーよ!!なんのためにみんなが栗崎家と戦ってると思ってんだよ!?
もちろん、この家を護るためもある。だけど、それ以上にお前が栗崎の息子と恋に落ちてるからだろ!?
みんな、お前の事思ってんだよ。こんなことで、諦めてほしくねぇって!」
「んなわけ…」
母さんの怒鳴り声に反論しかけたとき、香矢の言葉が蘇った。
″お前には、俺みたいな想いしてほしくねぇ″
″ほんとに好きな相手と離れなきゃなんない辛さなんか知らない方がいい″
寂しくて、辛そうな香矢の顔と一緒に。
そんなわけないなんて言えなかった。
ちょっと顔をあげて周りを見れば、心配そうな顔をしたみんなが見えたから。
香矢の言葉が、ほんとに本心なんだって理解したから。
母さんが珍しく怒鳴った意味が分かったから。