完全にうちの出る幕はない。
今までに見たことのない厳しい顔をした親父が睨みを効かす。
「吉岡との計画に口出しするつもりはねぇが……、ウチを買収しようってんなら、それはお断りだ。
あの家も、あの敷地も、人に渡す気はねぇ」
はっきりきっぱり親父は言い切った。
「……。あなたは何も分かってないようですね」
親父の話から少し間が開いて、ふっと勝ち誇ったような笑みを浮かべた。
「どういう意味だ?あ?」
ついイラっと来てケンカ腰になる。
ザザッ……
「……い…稜……」
不意にポケットに入れていたトランシーバーから声がする。
親父と目を合わせると、怪訝な顔をした。
「なんだ?どうした」
「…すぐ…引き…あ…ろ!!」
なんだか焦ったような声が聞こえて、すぐにまた声が続く。
「おばあが!!……おばあが人質に取られてる!!すぐ、引きあげて来い!!」
ちょうど電波が良かったのか、香矢の言葉がはっきり聞こえた。