栗崎も、うちと同じくポカンとした顔をしていた。
「……歌南虎は、元気にしてますか」
ふと呟くように栗崎の親父が言った。
「あぁ。相変わらずじゃじゃ馬だよ」
親父も変わらず笑みの浮かんだ顔で答える。
「どういうことだよ、親父。こいつと接点あんならわざわざうちを使わなくたって…」
テンパってちょっと親父に近づいた。
「まあな。そこは気にすんな」
…ハハっと笑って受け流された。
それにしても、母さんのことも知ってたなんて。
親父と母さんは高校が同じだから、栗崎の親父が知っててもおかしくはないけど……。
″歌南虎″なんて、馴れ馴れしく呼んでるってことは、多少なりとも関わりがあったんだろう。
「……さて、それはおいといて。私は、あなたたちがここへいらっしゃることを分かっていました。
だから、こうしてお待ちしていたわけですが」
急にがらりと雰囲気を変えて、高圧的に言った。
「まぁ、頭領(ドン)に会えりゃ話は早い。ここに来ることを知ってたんなら、目的も分かってんだろ?」
「えぇ、もちろん」
2人の間に見えない火花が飛んだ。