ダッと駆けて、栗崎を見つける。
「稜ちゃ…」
ベッドに座った栗崎は、目を見開いてうちを見つめた。
また心が揺らぎそうになったけど、親父の姿を見て、冷静になる。
「悪ぃがお前には人質になってもらうよ」
冷たく、感情のない声で言うと、親父が栗崎に襲い掛かり、手を拘束する。
「……お待ちしておりました、真木さん」
そこで、うちらの時間は止まった。
後ろから声をかけられて振り向いた先には、初めて顔を合わせる栗崎龍紀が、いた。
「お前……」
呆然と立ち尽くすうちとは逆に、親父の顔には笑みが浮かんでいた。
「久しぶりだなぁ、栗崎」
言って、フンと鼻で笑った。
「えぇ。何年ぶりでしょう。高校時代は、お互いいがみ合っていたものですが」
冷静な雰囲気の2人が交わす言葉は、うちには衝撃でしかなかった。
「おい、親父…、こいつと知り合いなのかよ」
「あぁ。高校の同級生だ」
……なぜ言ってくれなかったのか。
そもそも、同級生ならうちが栗崎に接触しなくとも、親父には栗崎家をしるルーツがあったのに。