妙に5分が遅く感じた。
「稜……もうすぐ5分です…覚悟決めてくださ……いね」
「わーってるよ」
若干バカにしたようなおばあの声に、呆れ気味に返す。
「稜。行きなさい」
やけにはっきと聞こえたおばあの声。
「お前ら、足引っ張るなよ」
にやっと笑って、ドアを蹴破って中に入る。
さっとあたりを見回してみると、使用人たちが一ヶ所に固まって震えていた。
「……稜さん…」
「…悪ぃな、奄美さん。ちょっと邪魔するぞ」
か細い声で名前を呼ばれて振り向くと、目に涙を溜めた奄美さんと視線がぶつかった。
一瞬逃げ出しそうになったけど、そこはしっかりスイッチを入れて切り替える。
今日はここへは仕事しに来たんだから。
パッと手で合図して、子分たちを分散させると、自分は栗崎の部屋に向かって駆け出した。
この5分の間に、親父たちは栗崎邸を制圧しているはずだ。
どうやら事は上手く運んだようだ。
静かに、でも素早く、階段を駆け上がって、親父と合流する。
「……行くぞ」
その一言で肯き合うと、親父が栗崎の部屋のドアを開け放した。