ガチャンとバイクのスタンドを立てて、いつもと違う角度から栗崎邸を眺める。
目の前には裏口が見えてて、ここから突入するわけだ。
バイクの音で気づかれても困るので、バイクは少し遠くへ置いてきた。
ザザッ……
「……稜…えま…か…」
途切れ途切れのおばあの声がトランシーバーから聞こえる。
「おう。聞こえてるぞ」
親父は自分のイヤホンマイクを付けているので、こっちの声もおばあの声も聞こえてるはずだ。
「三波たちが着いたら、……突入してもら…いますから」
若干電波は悪いままだけど、なんとか聞こえる。
「了解」
短く返事を返して、ほんとにいよいよなんだと緊張する。
「輝之。…行って!!」
おばあが声を張り上げて、それとほぼ同時に表が騒がしくなった。
中を組の連中の足音が駆ける。