せっかく何度も確認して、完璧と思ったのに……。
やっぱちゃんとなにか着ておくべきだった。
……後悔先に立たずってね。
でも、親父が案外普通の(?)反応で助かった。
すごい反対されると思ってたから、あれくらいの反応で収まってよかった。
ささっと髪を全部持ってきて、がっつり隠れるようにして立ち上がる。
「香矢、そっち終わったのか?」
ホワイトボードの前で自分の持っているノートとボードを目で何度も行ったり来たりしている香矢に声をかける。
「あぁ。……いよいよだな」
返事をしてからじっとうちを見て、しみじみとそう言った。
「そんな大袈裟なことじゃねぇだろ。……最悪栗崎家との確執ができるだけ。
家に被害はそんなねぇんだ、心配いらねぇよ」
呆れ気味に言ったうちを、ちょっと目を見開いて見つめた。
「お前、逞しくなったな。…いや、俺が知らなかっただけか」
少し微笑んでパタンとノートを閉じた。
「はぁ?」
意味が分からなくて聞き返すと、それ以上何も言わずにおばあの元へ行ってしまった。