夢の中で、栗崎がうちに微笑んだ。
いつもと変わらない声で。
いつもと変わらない顔で。
いつもと変わらない上から目線で。
帰るよ、と微笑んだ。
暗い暗い闇の中で、うちはひとり、ぽつんと佇んで、誰かの助けを待っていた。
どんどん闇は深くなるばっかりで、どんどん闇に飲み込まれるばかり。
叫んでるはずなのに、その声は闇に溶け込んでいく。
誰にも届かず、闇に吸い込まれていく。
恐怖と孤独でおかしくなりそうな感覚の中、ふっと遠くに薄い明かりが見えた。
その一筋の明かりは、だんだんうちに近づいてくる。
真正面に来たとき、眩しくて人の影しか見えなかったけれど。
その声は、はっきりと聞こえた。
いつもと変わらない声で。
その表情は、手に取るように分かった。
いつもと変わらない顔で。
その態度は、感覚的に伝わった。
いつもと変わらない上から目線で。
夢の中で、栗崎はうちに微笑んだ。
帰るよ、と微笑んだ。