覚悟を決めて、自分が通れるくらいにまで襖を開けて、居間へと踏み込む。
奥には、思った通り火山が噴火しそうなくらい顔を真っ赤にした親父が座っていた。
「稜っ!!てめぇ…。今日という今日は___」
「悪ぃ。…疲れてんだよ、今日。その説教、明日じゃダメかな……」
こんなに素直に謝ることなんかないから、親父もじいも、母さんもおばあまでも、呆気にとられたような顔をした。
「……明日、必ず」
そう言った親父の目は、びっくりするくらい泳いでいた。
それだけ言って親父は居間を出て行った。
その場に立ち尽くしたうちは、思い切り深いため息とともに、額に手をあてた。
「稜?…もう寝なさい」
おばあがすっと寄ってきて、うちの肩に手を置いて、そっと包み込んだ。
「…うん」
こんなに素直になったことは、きっと家族の前じゃ初めてかもしれない。
中ランのボタンをはずしながら、居間を出て部屋へと向かう。
階段の段差は驚くほど高く、足は鉛のように重い。
それでもなんとか階段を上りきって、部屋に入る。
ベッドへたどり着くと、中ランを脱ぎ捨てて倒れこむように横たわる。
ボーっとしているとまた涙があふれそうだから、ギュッと目を閉じて眠りについた。