それに重なって許嫁の件もある。


うちのイライラと栗崎のイライラがぶつかり合う。


「じゃあなんだってんだよ、お前っ」


「稜ちゃんこそなんなんだよ。鍵なんかかけちゃってさ」


「ちょっと待て。鍵かけてねぇって言ってんだろっ」


人は些細なことでケンカをする。


それは長年不良をやってきたうちにはよくわかる。


それをわかってても高ぶる気持ちは抑えきれなかった。


「そんなにうちが信じられねぇってのか!?」


「はっ、稜ちゃんなんか初めから信じてねぇよっ」


「なっ……」


信じられないくらいの衝撃が走って、自然と背筋が伸びる。


「あぁ、そうかよ。もういいよ。


お前は許嫁とでも仲良くしてろっ!!」


乱暴に言いきって、乱暴にケータイを閉じる。


乱暴に頭を掻いて、そばにあった椅子を思い切り蹴っ飛ばす。


その場にうずくまるようにしてしゃがみこむと、ガシャンッと椅子の倒れる音が怖いくらいに響いた。