自分の教室へと向かいながら、やっぱり沈んだ気持ちは変わらない。
さっきの栗崎の行動も、優しさからのものだってわかってても、寂しくなる。
″じゃあね″
あの言葉が何気ない日常の会話であることはわかってても、永遠の別れの言葉のようで苦しくなる。
「稜?どうしたの、さっきから」
聖華がうちの顔を覗き込んで、心配そうに眉を顰める。
「あ…あぁ? なんでもねぇよ、別に」
「目が泳いでますけど」
聖華の目は誤魔化しきれないし、優しく頭をなでながら″どうしたの″と言われると、すべてを吐きだしたくなった。
「えぇ!?栗崎先輩に許嫁ぇ!?」
「ちょ、声でけぇから!!」
一部始終を話し終えて、聖華は開口一番、でかい声でそう叫んだ。
慌てて聖華を抑えて、周りを見渡したけど、朝の教室は騒がしく幸い誰にも聞こえてなかったよう。
「許嫁だなんて……。栗崎先輩は知ってるの?」
やっぱり、そこが気になるよね。
「わかんねぇ。なんも聞いてねぇから」
頭を思い切り掻いて、机に項垂れた。