階段を笑いながら上って行く3人を立ち止まって眺めながら、組長の言葉が過る。
″栗崎友也には吉岡美麗って許嫁がいる″
その言葉を思い出した瞬間、心臓が嫌な音を立てた。
栗崎は、そのことを知ってるのだろうか……。
たとえ、知ってたとしたら。
その上でうちと付き合おうって言ったことになる。
じゃあ……もともと本気じゃなかったってこと?
うちとは許嫁と結婚するまでの″つなぎ″だったってこと?
……ダメダメ。
ちゃんと信じてやらなきゃ。
首をふるふると振って3人を追いかけて階段を駆け上がる。
「じゃね、稜ちゃん。またあとで」
3年生の教室と、2年生の教室は階が違うため、途中で別れる。
「お、おう……」
なんとなく元気がないうちを見て不審に思ったのか、栗崎は近づいてきてそっとうちの額に唇をつけた。
「じゃあね」
もう一度繰り返して、栗崎と綾村は教室へと歩いて行った。