大江戸一家は、確かにこの辺では一、二を争う権力を持っている。


親父もじいも頑固者だから、おとなしく誰かの下に入るなんて真似はしないし、うちもさせない。


だから、ちょっと荒々しくなるのも仕方がないのかもしれないけど……。


「お?電話だ」


組長のポケットに入っていたケータイが震えて、電話が鳴った。


「もしもし。……てめぇ、誰だ」


うちからは組長の電話相手の声が聞こえないから、組長の反応だけでおおよそをつかむ。


一瞬にして組長の声色が変わることを見ても、いいことではなさそう。


「なんだと!?……信二は無事なのか!?」


″信二″という言葉にうちも反応して、思わず前のめりになる。


「…わかった。そこへ行けばいいんだな?……わかった」


呆然としたまま組長は電話を切った。


「組長!!信二になんかあったんすか!?」


「……横田組の立花って野郎からだ。信二を預かってるから、裏町の第四倉庫に来いって」


裏町の第四倉庫……?


ここからバイクで40分ほど行ったところにある通称裏町と呼ばれる場所は、日の光がほとんど指さないため、昼間でも暗い通り。


そのためか、いろんな町のいろんなヤンキー族がそこを本拠地として活動している。


横田組の本拠地がそこにあるって話は聞いたことねぇけど……。