またしばらく考え込んだ組長は、急に目を見開いてうちを見つめる。


「組長…?」


「稜。落ち着いて聞けよ」


そう前置きした組長は真剣な顔つきで話始めた。


「栗崎友也には、吉岡美麗ってまあ美人な許嫁がいる」


「え……?」


許嫁ってなんだよ。


あの、許嫁か?


読んで字の如し、互いの親が勝手に結婚相手を決めるってやつ?


「吉岡建設ってお前も名前くらいしってるだろ?」


有名な建物の建設に数々携わってきてる大手の建設会社。


そりゃ、知らない人はいないんだろうけど。


「その吉岡建設の娘さんが、美麗さんだ。


栗崎の親父さんが今進めようとしてる巨大ショッピングモールの開発を優位に進めようってんで、吉岡建設を味方につけようってことらしい。


そのために、この辺で大きな権力を持ってる、江戸前一家とそこに関わる全ての機関を自分の下に入れようとしてる。


お前がさらわれたのも、信二がいないのも、いろいろそこに関係してるのかもしれねぇ」


そういや、親父とおばあがこの町と隣町の境目に巨大ショッピングモールが建つとかなんとか言ってたような……。