「…実はうち、さっきまで横田組のやつらにさらわれて、変な家に入れられてたんです。
目的はよくわからないんですけど……どうやら江戸前一家と関係あるらしくて」
真剣な眼差しで聞く組長の顔は、次第に険しくなっていく。
「″江戸前一家の跡取りをさらえ″っていう命令が横田組の総長から出てるらしくて」
そこまで話してから、小さく息をついて、組長を見つめる。
「横田組、ね……」
組長はしばらく考えてるような素振りをしていたが、やがてハッとした表情でうちを見た。
「横田組の総長って確か、栗崎龍紀だよな」
この世界に長い間いるだけあって、岸田組長は顔が広く、情報も多い。
「えぇ」
目を見開いたまま答える。
「実はな。
最近、うちの縄張りを長田組のやつらがうろちょろしててな」
ゆったりとソファに身を沈めて、組長は話を切り出した。
「それと、一週間くらい前に栗崎の親父さんから電話がかかってきてな。
″私の下に入らないか″とおっしゃった。
何の話か分からないから俺は断ったけど、私の下というのが長田組・横田組のことだったってことだな」
栗崎の親父の目的が一向に見えてこない。
何がしてぇんだよ……。