バイクで飛ばして約10分。
岸田組の事務所に到着して、急いで階段を上がる。
乱暴に扉を開けて、中に入ると、組長がイライラした顔でうろうろしていた。
「組長っ」
声をかけると、組長は驚いたような顔で振り向いた。
「稜か…。早かったな」
ちょっと穏やかな笑みを見せて、ソファに座った。
組長の向かい側のソファに座って、お互い重苦しい雰囲気を纏う。
「……信二から、連絡ありました?」
自分の組んだ手を見つめながらボソッと呟くように言った。
「ない。ほかの組員に聞いても分かんねぇって返事ばっかだ」
ハーっと大きくため息に似た息を吐いて、組長は深くソファに腰掛ける。
「…もしかしたら、ですけど。
信二がいなくなったのって、横田組にさらわれたからかもしれないです」
ゆっくり話出したうちの言葉に、驚きを隠せないと言った表情でうちを見つめた。