「今日はマジでごめんね。親父にはちゃんと言っておくから」


栗崎に家まで送ってもらって、門前で別れた。


自宅へ向かって歩き出す彼を、うちは微笑みながら見送った。


なんか……幸せ、かも。


角を曲がって姿が見えなくなったのを確認して、自分の家に入る。


玄関には3つ、見慣れた靴が置いてあった。


「ただいまぁ」


間延びした声で中に呼びかけるけど、返事は返ってこなかった。


靴、3つもあるのに。


香矢と、三波と、おばあのと。


香矢と三波は寝てるとしても、おばあが出てこないのは不自然。


いるなら絶対出迎えてくれるのに。


「おばあ?…いねぇの?」


居間を覗いてもおばあの姿はない。


おばあは2階にはいかないから、1階をすべて探してみたけど、どこにもおばあの姿はなかった。


それどころか、三波も香矢も自室にいない。


「…どうなってんだ……」