玄関らしきドアを潜り抜けて、外の空気を吸うと案外遠いところじゃないということに気付いた。


走りながら後ろを振り向くと、今までうちがいたのは普通の一軒家だった。


「稜ちゃん……ごめんね」


尚もうちの手を引きながら、栗崎はいきなり謝った。


「何が。栗崎のせいじゃねぇだろ、なんも」


手を引かれるまま、栗崎のちょっと後をついて歩いてるから、栗崎の表情は分からないけど、きっと本当に申し訳なさそうにしているはず。


「でも、俺ん家の組だし。ホント、ごめんね。


…ったく、せっかく手に入れた稜ちゃんに嫌われたらどうしてくれんだよ」


最後に小さく呟いた言葉は、独り言のようだったけど。


小走りになった栗崎は全然息も上がってない。


…うちだって負けてないけどさ。


「まぁ……うちをさらった理由は一つも見えてねぇけど。


栗崎ん家の組だって言ったって、総長は栗崎の親父だろ?なら、直接栗崎には関係ねぇよ。


気にすんな」


中ランのポケットに手を突っ込みながら爽やかに言ってみた。


「……それと。


何があったってうちは、栗崎のこと……嫌いになったりしねぇから」


言いながら顔が赤くなっていくのがわかるけど、ちょっと前を歩いている栗崎にはぎりぎりばれない…はず。