あぐらをかいて座った栗崎は、頭をかきながらフーッと息をついた。


うちも同じようにあぐらをかいて、栗崎の様子を眺める。


ふと栗崎がうちの方を向いたから、目がばっちりと合う。


「なに。そんなに俺のこと見つめてさ」


こんな状況でも冗談が言える栗崎はとっても腹が据わっている。


「なんでもねぇけどよ……。お前まで、危ない目に会うんじゃねぇぞ」


さっきの栗崎の言い方だと、きっと横田組のやつらは栗崎にまで危害を加えそう。


「……稜ちゃん守るためなら、別に構わないけど」


真剣な顔して、栗崎は首をかしげる。


「…ばっ、バカ言うんじゃねぇよっ!! お前、喧嘩なんかしたことあんのかよ」


戸惑いながらもそう問いかけると、栗崎はおかしそうに笑った。


「ないねぇ。組員は絶対俺に手出しちゃいけないことになってるからさ。


でも。……いざとなりゃ、どうとでもなるんじゃないの」


お気楽に笑い飛ばして、栗崎はそっとうちを抱きしめた。


「なにしてんだよ、こんなときに」


なんかもうびっくりもしなくなってきて、冷静に突っ込みを入れる。


「こんなときだからこそ、だよ」


意味不明の言葉を吐いて、栗崎はしばらくうちを抱きしめていた。