なんで、こいつがこんなとこにいんだよ。


いや、確かに栗崎家の所持組なんだからこの場所を知ってる可能性は無きにしも非ず。


だけど、なんでソファの陰になんか潜んでたんだよ。


「お前な、なんでうちがこんな目に会わなきゃなんねぇんだよっ」


キレ気味……というか完全にキレた口調で栗崎に喧嘩を売ってみるけど、栗崎はあくまでも冷静で。


「しっ。あんま大きい声だすと聞こえるから、向こうに」


向こうにってことは、誰かいるんだな。


「ってか、なんでお前ここにいるんだよ」


「そりゃ、うちが持ってる組だから」


なんともわかりきってる答えを、ありがとう。


「じゃなくて。なんでお前まで隠れるようにしてんだって」


「……簡単に説明できることじゃないけど。


向こうにいる組員は、全員横田組の人間だ。稜ちゃんなら知ってると思うけど、横田組は長田組と違って血の気の多いのがそろってる。


だから、力でもの言わせるときは、横田組を使うんだ」


この世界じゃなんとも有名な話。


ま、長田組と横田組の総長やってんのが栗崎龍紀だってことは、あんまり知ってる人いないんだろうけど。


「今回も同様。でも、なんでその横田組のやつらが稜ちゃんをここに連れてきたのかっていうのはな……。


江戸前一家の跡取りをさらえってうちの親父が命令を下した。


俺にも、その理由はわかんねぇけど、あんまりいい話じゃねぇことは確かだ」


栗崎は暗がりでもわかるほど、眉間にしわを寄せて、怖い顔をしていた。