自分の家に向かって歩き出してから30分後。
「……おい」
急に誰かに呼び止められた。
「あ?…うち?」
周りを見回してもうち以外には誰もいないから、仕方なく足を止める。
家は目の前だっていうのに。
声のした方を振り向くと、暗がりの中からうちと同じような格好をした男が現れた。
年はうちより5つは上で、身長もうちより10センチくらい高い。
呼び止められた声からは、慎重さが伺える。
帽子を深くかぶり、顔はよく見えないけど、やっぱりいい感じの雰囲気じゃない。
「真木稜、だな?」
「だったらなんだよ」
「ちょっと失礼するぞ」
男がそう言い終わる前に、うちの意識は遠ざかって行った。
なぜなら、男に鳩尾を思い切り殴られたから______。