「でも」
もう一度言い直して、栗崎の顔からは凛々しさが消える。
「こういうことは、いっぱいしようね」
やっぱり。
こういうことだと思ったわ。
「……ん」
呆れた顔のまま小さく肯いて首のあたりをかく。
「じゃ、うち帰るわ」
このままここにいると、きっとうちはおかしくなる。
これ以上栗崎の家にいるとまともなうちでいられなくなる。
「え、なんで」
案の定、栗崎が引き止めたけど、やっぱりだめ。
「……これ以上、栗崎と一緒にいるとなんか…おかしくなりそうで……。
だから、また明日なっ」
そう告げると、足早に栗崎の家を出た。
しばらく行ったところで立ち止まり、振り返ると栗崎が部屋から手を振っているのが見えた。
思わず笑ってしまったけど、栗崎に手を振り返して中ランのポケットに手を突っ込んで家へ歩き出した。