「あら、稜。お帰り」
おばあはゆったりとした口調で微笑んだ。
おばあの微笑はうちの中のイライラを少し鎮めてくれるものだった。
「あ・・おばあ。親父は?」
「稜。いつも言ってるでしょ。親父じゃなくてお父さんだって」
うちの質問には答えず、いつも通りのお説教。
「あぁ、はいはい。・・で、親父は?」
反省もせず、直すわけでもなく、同じことを聞いた。
おばあも、うちがそんな素直に直すわけもないと分かっているから、2回目にはちゃんと答えてくれる。
「輝之なら、お父さんと一緒にどこか行きましたよ」
輝之とは、うちの親父。真木輝之(マキテルユキ)49歳。
もう50になろうと言うのに、うちに負けないくらいの元気さで不良やってる。
おばあの言うお父さんは、じいのこと。
じいももうすぐ75になるのに、親父とかわらず不良やってる。
うちは不良一家だけど、実家は由緒正しき?極道の家で、ほら、ごく○んの大江戸一家みたいなね。
真木一家ってわけじゃなくて、江戸前一家なのね、なんか知らんけど。
まぁ、極道家だからってうちが後継ぐわけじゃないからどーでもいいけどね。