「稜ちゃんっ」
急に背中があったかくなったと思ったら、綾村がうちをギュッと抱きしめていた。
「おっおい!!何してんだよ!!」
「友也が稜ちゃんを好きになった理由、わかる気がする。
俺も、稜ちゃん好きだよ。あ、もちろん友也とは違う意味でね」
うちに抱きついたまま、まるで女の子のようなかわいい笑顔で言った。
「わっ分かったから離れろ、お前っ」
こんなとこ聖華に見られたらどうすんだよ、マジで殺される。
パッと離れて、また女の子みたいな笑顔で微笑みかける。
「なぁ、もうチャイム鳴ってんぞ?
授業始まってると思うんだけど」
うちの言葉に綾村の笑顔が消えて、目をこれでもかというくらい見開いた。
「やばっ!!怒られる!!じゃね、稜ちゃんっ」
走りながらもうちに手を振って教室に向かっていった。
そんな綾村を見送って、思わず微笑んでいる自分に気づく。
なんとなく、憎めないやつだな。
不思議と楽しい気持ちになりながら、玄関に向かってまた歩き出した。