あれから、どこをどうやって帰ってきたのか、気づいたらうちは自分の部屋にいた。


ドアを背に、呆然としたまま座ってた。


まだ……唇に感触が残ってる。


ゆっくりと近づいてきた栗崎の表情が頭に残ってる。


前にも一度キスされてるけど、今回は何か違う。


きっと、うちの中の心境の変化のせい。


栗崎を好きかもって思い始めて、聖華に好きだよって断言されて。


そう思ってるのとそうじゃないのとじゃ、キスでも全然意味が違う。


どうしよう……。


このままじゃ、どんどん栗崎を好きになっちゃう。


この家の跡継ぎっていうプレッシャーと、不良であるプライドが、栗崎に恋することを許さない。


誰と恋しようが勝手じゃんって思うけど、跡継ぎになるためには、やっぱりちゃんとしたところの人と結婚しなきゃいけない。


極道の一家のくせして、ちゃんとしたところの人とか意味わかんねぇんだけど。


聖華には素直になれって言われたけど、認めたくない自分がいるし、なんか負けたみたいでイヤ。


"絶対手に入れてやるんだからね"


"そのうち、ちゃんと俺しか見えないようにしてやるからさ"


そう言われて、そんなんあり得ねぇって突き放してるから、今更やっぱ好きなんて言えないし、言いたくない。


やっぱり、負けた気がするもん。