「バっ……。んなわけ、ねぇだろ…」
いつものうちらしくない、弱気な声。
そういうのに栗崎は敏感で。
「ちょ、おいっ!!やめ……」
気付けば目の前の風景は栗崎越しの川から栗崎越しの空に。
背中には草の冷たい感触。
首筋を変な汗が流れる。
「おい、栗崎っ。何してんだよ、お前」
さすがのうちもこれには焦った。
いつもなら、一発蹴りでも入れてやるんだろうけど、こういう状況には慣れてないから、どうしようもできなくて。
「素直じゃないな、稜ちゃんは」
そう言った栗崎の顔が近づいてきたと思ったらチュっと小さくリップ音がした。
びっくりして目を見開いたまま、栗崎が離れても動けなかった。