急に、栗崎が腕の力を抜いた。


うちはいつでも逃げられる状況。


もちろん、即刻飛び退いて、栗崎をにらみつける。


でも……ちょっと、がっかりしてるうちがいる。


どうして?


なんなんだろう、この感じ。


また、うちらしくないよ。


いつもなら、こんなことされたら思い切り相手の顔ぶん殴ってやってるのに。


栗崎にはできない。


「稜ちゃん、どうしたの。そんなに俺のこと見つめてさ。……あ、もしかして惚れ___」


「あり得ないから」


栗崎の言葉を遮って、そう言ってみたけど…。


本当にそうだろうか?


万に一つでも、うちが栗崎に惚れてる可能性がありそうな気がする…。