気づけば、うちの目の前には、栗崎のTシャツの柄。


ということは……?


「稜ちゃーんっ。逃げ出そうなんて、不良らしくないね?」


上から栗崎の声が降ってくる。


…確かに。


こそこそ逃げ出そうなんて、うちらしくないかも。


どうしてか、栗崎の前だと、いつものうちじゃいられない。


なんなんだろう、この感覚。


今までに感じたことのない感覚…。


って。


「は、離せぇぇぇ!!」


「い・や・だ」


語尾にハートをつけながら、栗崎はうちを抱いてる腕に力を入れる。


「だって、こうしてほしくて稜ちゃんは俺に近づいてきたんでしょ?」


「んなわけないだろ!!」


栗崎の腕の中でじたばたしてみるけど、流石は生徒会長、全然逃げられない。


「なぁんだ。…じゃ、いいや」


「へ?」