「体育館、もう過ぎてるけど?」

「へっ!?」


突飛な発言に、訳も分からず私はピクっと眉を震わした。



なに!?



何なの、ソレ!!?




ハッとして振り返ってみれば、体育館の入口は数メートルも後ろに……。



考え事しながら歩いていたから、気付かなかったんだ!



「は、話ってそれだけ!?」

「え?」



あまりに思いがけない展開で平常心を崩された私は、火照った顔を気取られないように背けた。


「何で腕掴むの? 放してよ!」

「だって、さっき俺の横通り過ぎようとしたでしょ? 段ボール、後ろだよ?」

「わっ、分かってるッつーの!」

「そ。ならいいんだけど」


カラッとした屈託無い笑顔。
照れ隠しに腕を振りほどいて、踵(きびす)を返す。