ミキは『ハルくん』なんて呼んでいるけど、私にとってはただの幼馴染み。

ちょっと意地悪を言いたくなるのは、そのせいなのかもしれない。


「ハルの歌なんか、どうせ下手っピなんじゃないの。アイツのために体育館のセットするなんて時間のムダよ。ム・ダ!」


そんな毒舌が回り始めた矢先。

ヒョッコリやってきた女子が言った。


「佐渡さん! 体育館のわきに積んである段ボール、2、3個持ってきてくれない? 体育館準備のついででいいから!」


はぁ!? 何であたしが──と言いたいところを、ぐっと飲み込んで返事をする。


「うん、いいよ!」


隣で見ていたミキが、気の毒そうに言う。


「カナエってさ、中学の時もそうだったよね」

「そーそー。頼まれたら『嫌』って言えないんだよねぇ、あたし」

「それ普通、自分で言う?」

「気にしない気にしない! 行ってきまーす」


ひとしきり笑い合った後、やっと重い腰を上げて行動し始めた。