「じゃぁ・・・俺と杏子は死にかけてるってこと?雅人達も?みんな?」

「ううん。死にかけてるのは修一だけ。車は窓際にぶつかったから、雅人君たちは奇跡的に軽症で済んだみたい。」

「じゃぁお前はどうなんだよ?雅人は助かって、俺は死にかけてて・・・杏子はどうなんだよ。」

聞く声が震える。なんとなく、答えが分かっている気がした。

「私は・・・ダメだった。」

杏子はわざと明るくそう言った。

「・・・けんなよ・・・ふざけんなよ・・・そんな話信じられるわけ無いだろ。やめろよもう。」

 僕は触れていた杏子の手を振り払った。杏子は困ったような顔をしたけれど、話すのを止めなかった。

「雅人君たちがここにいるのは、ここが修一の為に作られたからなの。だから・・・幻っていうのかな・・・言い方は悪いかもしれないけど・・・」

雅人達が幻?

「ここにちゃんと居るのは修一と私と・・・拓也君だけ。拓也君は乗用車の方に乗っていたの。ご両親と拓也君はおばあちゃんの家から帰る途中だった。正面からぶつかったから、運転していたお父さんと助手席に座っていたお母さんは即死状態だったみたい。」

「拓也は?」

聞かない方が良いと思うのに口が勝手に動いてしまう。

「拓也君は・・・頑張ったんだけどだめだった。ご両親も亡くなってるし・・・生きる気力を持つのが難しかったんだ。修一に会ったあの日が最後だった。・・・私ね?はじめは、どうして私なんだろうって凄く恨んだんだ。あなたのことも。だってそうでしょ?たった一つ席が前だっただけで私は死んじゃって、しかもあなたが生き返る手助けをしなきゃいけないなんて。」

僕は黙って聞いていることしか出来なかった。

「でもね?今は私、自分でよかったって思ってる。修一はね?ここに居る間に、現実の世界への強い意思を持たなきゃいけないの。生きたいってゆう強い意思。その意思を確認するために、私みたいに一人、選ばれるんだけど、大抵はその人に関わりの強い人とかが選ばれるのね?で、なんで修一には私だったかわかる?」

僕は黙って首を横に振る。