「公園だ!」

いつの間に起きていたのか、拓也が声を上げた。

「拓也、起きてたのか?じゃぁ降りろよ。」

拓也はえへへーっと笑ってピョコンと背中から降り
た。

「もしかしてちょっと前から起きてたんじゃないの
か?」

拓也はニコニコして僕を見ている。やっぱりそうだ。逃げ出そうとした拓也を捕まえようと手を伸ばした時、

「もうここで良いよ。」

と、杏子が足を止めた。

「いや、危ないから送るよ。」

「大丈夫、もう近くだから。」

「拓也ん家も?」

「うん、本当に近くだから。」

あまりしつこくしてもいけないだろうと思い、僕はここで引き下がることにした。

「そっか。じゃぁ気をつけて。何かあったら大声出すんだよ。」

「わかった。」

「お兄ちゃん、ばいばいっ。」


二人と別れ、僕は今三人で通ってきたばかりの道を一人で引き返した。

「こんなにたくさんの星があったんだな。」

夜風はもう夏の終わりを告げ始めている。
マンションに帰ると、今まで狭くしか感じなかった自分の部屋が、なんだかいつもより少し広く感じた。

「俺って案外ロマンチストかもな。」

シャワーを浴び直してさっきまで拓也が寝ていたベッドに横たわると、僕は直ぐに眠りについた。そしてその日から、やっぱりあの夢は見なくなった。