アヤトは決して、自分のことを手紙には書かない。だから、朔緋がアヤトについて知ることといえば“アヤト”という名前、それだけだ。 けれど、それでも。 好きになるのは必然だった。逢ったこともない彼に――今日も朔緋は、恋をする。 ねえ――アヤト。私、ずっとあなたを待っている。 檻の中でいい。自由になれなくたっていい。ただ、あなたに逢えるなら――……