意思の疎通をはかれる者はいない。だが――たった一人、朔緋に言葉をくれる人がいる。


 誰にも見つからないように、戸棚に隠した手紙の山。そのうちの一つをそっと手に取った。


『朔緋へ
 いつか君を、
 必ずその檻から自由にするから』


 こんな手紙が届くようになったのは、たしか一年前くらいからか。綴られるのは外の世界の話だったり、書物の話だったり、他愛のない内容――そして、“これ”だ。


 差出人の名はアヤト。ただ一人、朔緋に温かい言葉をくれる相手だ。