移動を制限される以外、檻の中の生活はなんとも自由なものだ。食事は一日三度運ばれてくるし、何か欲しいものがあれば、その際女中に頼めば持ってきてくれる。


 そんな暮らしを五年間。鎖と鉄格子がなければ、ここが檻であることを忘れそうになる――そんな風に思えるよう、人恋しさも忘れられればいいのに。


 朔緋の許を訪れる人間は女中達しかいない。その女中達だって――頼みは聞いてくれても、決して返事をくれはしない。


 その姿は人間よりも人形に近い。だからここでは、何を話してもすべて独り言なのだ。