実際に口にしてみると、なんとも妙な感覚だ――自分がこうもあっさり、“喰われる”ということを受け入れていることが。朱都も同じことを感じたのか、眉をひそめて尋ねてくる。
「お前さ、少しは現状に抗おうとか思わないのか? いや、別に何が変わるわけでもないんだが……喰われることが、俺が怖いとは思わないのか?」
――怖い。死ぬのは怖い。この恐怖は死までの過程へのモノか、それとも死後の世界へのモノか。勿論どちらも怖い、それは未知への恐怖だ。
それでも、その恐怖に朔緋を導く朱都のことは。決して恐怖を感じないのだ――そういう風に染められてしまった、あの手紙によって。
「別にそんなのどうだっていいでしょ?」
――その事実を、朔緋のことを餌としか見ない彼に伝えるのは癪だ。