「お雪…逃げよう。俺と一緒に。龍彦様から逃げるんだ!!」

俺は、自分の気持ちに何の迷いもなかった。

「凜…。」

「お雪!!早く!!来るんだ!!」

「はいっ…!!」

俺たちは逃げた。

橋を渡り、田畑を越え、どれだけ行ったかわからない。

ただ無我夢中で、気付いたら東の空が明るくなっていた。

お雪の目は泣いたせいで赤く腫れていたが、口元はほほ笑んでいた。

「ここまで来たら、しばらくは大丈夫だろう。」

「凜、ありがとう。」

お雪はそう言うと、俺の頬にかるく口付けをした。

俺が真っ赤になって照れているとお雪は「ふふっ。」と笑った。

そして俺たちは幾日かして、家をこしらえた。

その間、俺たちを追い求めてくるものは現れなかった。

俺たちは2人楽しく日々を過ごしていた。