「しかし…私は親方様の長男との婚約をしております。」

そう答えた。

「なぜなのでしょう…。私が愛しているのは凜、あなただというのに!!なぜ愛してもいない人と姻を結ばなければならないのでしょう…!!」

そこまで言うとお雪は泣き崩れてしまった。

どうしてこんな時代なんだ!!

愛し会っている者同士の想いが結ばれたのに悲しまなければならないんだ!!

「私は…知っていました。親方様の長男、龍彦様と結ばれる日を。けれど、その話を聞いていた私を知った親方様は一年の猶予を与えて下さり、"愛する者の元へ行け"と言って下さったのです。」

あと…半年…。

「半年したらお雪は俺の前からいなくなってしまうのか…?」

こくり…とお雪はうなずいた。

それから半年間、おれは何事もなかったかのように日々暮らしていた。

お雪もそれに合わせてそれなりに楽しく生活していた。

俺の心は日が経つにつれ、お雪への愛を増やしていった。

三月程経つとお雪は毎夜、まるでかぐや姫のように月を見上げては涙を流していた。

俺はそんなお雪がかわいそうで仕方なかったんだ。