そして日が暮れてきたので帰ろうとすると「凜っ!!」と俺を呼ぶ声がした。

振り返ってみるとお雪がいた。

「迎えにきたのよ!!」

お雪は満面の笑みで手を振っていた。

俺らは二人で一緒に家へ戻った。

次の朝も、その次の朝もお雪は毎日握り飯を作ってくれ、夕方になると水田まで俺を迎えに来てくれた。

そんな生活が半年近く続いたある日、俺がいつものように朝起きると父上が「今日からは稲刈りだ。たいして力もいらん。わしがやるからお雪と薬草を摘みに行っとくれ。」

「はい!!」

俺はお雪を起こし、山へ薬草を摘みに行った。

「これは煎じて飲むと腹に聞くわ。こっちは塗ると消毒になるのよ。」

お雪は色々と教えてくれた。

生まれて初めて薬草を採りにきた俺にとってお雪は頼もしい存在だった。

「たくさんとれたな。」

「そうね。これだけあれば三月はもつわね。」

「さて、帰ろうか。」

「そうしましょう。…きゃっ!!」

「危ねえ!!気をつけるんだぞ。ここらは急斜面だからな。」

俺は寸前のところで崖下に落ちそうになったお雪の手を引っ張り上げた。

「ありがとう…。」

この時、気付いた。

俺はお雪に情をもっている。

心なしか、お雪のほおは赤みを帯びていた。