「そうよ!!私が親方様の元へ行く前日、凜が私にくれた手鏡よ!!」

その当時、俺は《去ってゆく者には自分の心を映し出す鏡を差し上げるのが何よりの餞別だ》という事を母上から聞いていた。

だからお雪にも鏡を渡した。

そんな鏡を八年間も持っていてくれた事が嬉しかったんだ。

そして、すぐ家に着いた。

「上がんな。」

「ええ。」

「父上!!母上!!茶の間に来てくれぬか?」

俺は声を張り上げて父上と母上を呼んだ。

「なんぞやね?あれ!!どないしたん~?この美しい娘さんは。」

「昔、家の近くに住んどったお雪や!!流行病でお父とお母亡くして売られた!!」

「お雪かね?綺麗になったなあ~!!」

「ご無沙汰です。実はお願いがあって…。」

するとお雪は親方様の病気の事、行くあてがなくこの草村へ戻ってきた事を話した。