だが十になった頃、流行病で両親が亡くなり、金のなくなったこの村はお雪を売り払ったのだ。

「親方様…病気なの。だから私にうつすまいとして私を手放したの。」

「お雪…行くあてはあるのか?」

「ないわ。私には何もないわ…。」

「だったら家に来るといい。父上も母上もきっと許してくれる!!」

「ありがとう…。」

お雪はそのまま俺の水田の仕事が終わるまでずっと待っていた。

「お雪、行こうか。」

「ええ。…こうやって歩くのは何年ぶりかしらね。」

お雪はそうやってくすくすと小さく笑った。

「あれからもう八年か…。」

「八年も経つと人も変わるものなのね。凜、私今も持っているのよ。」

「え…?」

するとお雪は着物の裾から包みを出して広げた。

「これっ…。」